1865 年の春、羽島に集結した若き薩摩の志士たち。家柄も、年齢も異なる彼らは、 英国留学の密命のもと、新しい名前(変名)を与えられ、旅立っていきました。海外で 異文化に触れ、最新のテクノロジーを目にした若者たちは、留学後に波瀾万丈の人 生を送ることとなりました。 今回は、過去5年間に特別企画展で取り上げた村橋久成、五代友厚、町田久成、 松村淳蔵、長沢鼎の5名もまた、時代の大きなうねりに揉まれ、流され、抗いながら、 それぞれの生きる道を模索してきました。 日本の産業界に大きな影響を与えた者、大阪財界で輝かしい功績を残した者、日 本の伝統文化を守ることに人生を賭けた者、留学時の藩命に忠実に生きた者、米国 に渡り成功を収めた者、彼らの人生にとって英国留学はどのような意味を持っている のでしょうか。 村橋が北海道でビール工場建設に奔走していた頃、五代は大阪会議を斡旋、町田 は国立博物館の建設に尽力、松村は海軍兵学校の校長に就任、長沢はカリフォルニ アでワイン造りをスタートさせています。 非業の死を遂げた者、志半ばで病に倒れた者、第二第三の人生を選択した者、与 えられた人生を全うした者、異国の地で生涯を終えた者、彼らにとっての士魂とは何 だったのでしょうか。 留学生渡欧160周年にあたる今回は、5人の共通点や相違点を探りながら、彼ら の人生の奇跡と英国留学の意義を今一度捉え直します。
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