1865年6月12日午後5時ごろ、燃料補給のために薩摩スチューデント一行はマルタ島に寄港し、数時間を過ごすことになりました。
マルタ島は面積246㎢、標高253m、世界で初めて生活用水を海水から生み出した島で、中世以来、地中海中央に位置する関係上、軍事的要衝地として重要視されてきた島でありました。一行は首都である城砦都市バレッタへ見物に出かけました。林立する荘厳なカトリック教会の聖堂、武具陳列所など・・・やはり武士である彼らの興味を最も引いたものは、中世期の騎士たちが使用した鉄の鎧や長剣、小銃などの西洋武器でした。松村淳蔵は洋行日記に「昔年は西洋の人も長槍長刀を使ふたる哉に見へ候」と感想を述べ、「数百年を経たる鎧は丈夫成ものにて面には鉄面を網様にいたし有之候」と、日本の鎧とは大きな違いがあることを記しています。彼らにとってはこのマルタ島が純粋の西欧文化に触れた最初の場所であり、これまでの航海途上で得られた知識と重なり合って、より深く西欧文化・技術の先進性を認識することになりました。そして同時に日本の立ち遅れを身に染みて痛感することになったのです・・・。この後、夜10時ごろマルタを出帆し、最後の寄港地ジブラルタルへ向かいます・・・。 この続きは、6月16日となります。お楽しみに(^^)/
畠中